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大規模通信障害に思う。 [2022/07/08] [社会問題]

KDDI(au)の大規模な通信障害は7月5日の午後3時半すぎに『音声通話』を含めて全面的に復旧したと発表しています。7月2日の午前2時前のトラブル発生から約86時間が経過した4日目にようやく収束したことになります。最大3915万回線に影響しており、個人や法人だけではなく社会基盤と言われるインフラにも大きな影響を及ぼしました。

いかに今の社会が携帯電話の通信回線に頼り切っているかということを露呈した結果とも言えます。

今回の大規模な通信障害に至った経緯を公開されている情報などを基にして簡単にまとめてみることにします。


携帯電話の通信システムは複数のネットワークによって構成されており、そのネットワーク同士を接続するために「ルータ」を使用しています。これは家庭や企業のネットワークでも仕組みは同じで、インターネット接続をするには契約するインターネットプロバイダが使用しているネットワーク(WAN)と家庭や部門など内部で使用しているネットワーク(LAN)という異なったネットワークを接続する必要があります。このネットワーク間の橋渡しをして、情報のやりとりを交通整理する役割を果たしているのが「ルータ」なのです。

KDDIが公表した内容によると、大きく分けて3つのネットワークで携帯電話の通信システムは構成されているようです。(実際には相当数のネットワークによって構成されているものと考えられます。)

 1つ目は携帯電話としてのネットワーク
 (携帯電話と基地局のやりとりや位置情報、使用状態、課金など)

 2つ目はインターネットとの接続をするためのネットワーク

 3つ目が「音声通話」を「データ通信」に載せるためのネットワーク
 (言葉として良くでてきた『VoLTE』がここに該当します。)

今回の通信障害で問題となったのは1つ目のネットワークと3つ目のネットワークを接続する「ルータ」のトラブルが主な原因です。報道によると、KDDIがメンテナンスで「ルータ」をメンテナンスで交換をしたところ、『VoLTE』と呼ばれる『音声通話』を『データ通信』に載せるためのネットワークで『音声通話』を上手くネットワークに載せることができなかったことから元の機器に戻した結果、今回の大規模通信障害に至ったということです。

私たちが持っている携帯電話やモバイルルータと言った端末機器は、通信が可能なように常に基地局と電波や位置情報の確認しています。つまり、通話やインターネットなどといったデータ通信をしてなくとも、正常に動作するように自動的に電波を拾うために通信をしているのです。

わずか15分、それも深夜でエリアを東日本と西日本に分けていると言っても、相当数の端末機器から基地局との通信をしていれば、中核的なネットワークである『VoLTE』のネットワークに接続できないことで端末機器と基地局情報を管理しているデータベースの間でエラーが発生し、それを解消するためにデータベースからも『VoLTE』のネットワークに改めて確認に行くことになるとKDDIの携帯電話の通信システムに流れる情報量(これを『トラヒック』と言います。)も多くなるため『輻輳』という現象が起きるのは当然のことです。

ある意味ではKDDI側のメンテナンスをする際の甘さがあったものとも言えます。

一方で、今の携帯電話事情にも問題があることも忘れてはなりません。

KDDI(au)は、他のキャリアに先駆けて今年2022年3月31日でこれまで使用してきた『3G回線』によるサービスを終了しました。これはiPhoneやAndroidと言ったスマートフォンが主流となり『音声通話』よりも『データ通信」が重視され、通信速度の向上が求められた結果のものです。

これまでの『3G回線』は、携帯電話の本来機能である『音声通話」に重きを置いていたことから『データ通信』は『音声通話』の「おまけ」でした。つまり、現在の方式である『VoLTE』は『データ通信』に『音声通話』を載せるためのネットワーク(システム)なので考え方がまったく反対となっているのです。

この背景には『データ通信』に重きを置き過ぎた結果であり、利用者である私たちも改めて考えなければならないことです。

大規模通信障害に至った原因の1つに『3G回線』を廃止したことも挙げられています。これまでは別々に運用をしていたネットワークを1つに統合したことにより、携帯電話のネットワークに大きな負荷をかける結果となったことも言えます。果たして『3G回線』で担っていた機能が『VoLTE』において本当にカバーできるだけの能力があったのかと言う疑問も湧いてきます。

ところで今回の大規模通信障害では使用している携帯端末でその明暗が別れたことも言われています。それはiPhoneでは『データ通信』が可能でAndroidでは『データ通信』がダメだったと言うことです。これはAndroidでは『音声通話』ができない状況では『データ通信』もできないというシステム上の制約があったようです。

私はiPhoneユーザーで通話には専用のいわゆる「ガラケー」を愛用しており、長年auを使用してきています。このため、Androidは使用したことがなく、詳細は理解できていないので、言及は避けておきます。

ただ、iPhoneはキャリア(docomoやau、Softbankなど)が独自に販売する携帯端末ではなく、Appleの製品です。このような携帯端末をメーカが販売している場合は、基本的に『SIMフリー』となります。これをキャリアが販売するときには自社回線でしか使用できないようにソフト的に設定をかけます。これが『SIMロック』です。

このため、iPhoneやPixel、Galaxy、Xpediaなどの「ブランド携帯(勝手に私がそう読んでいるだけです。)」の場合は、最初からすべてのキャリア回線に対応できる『SIMフリー』であって当然のことなのです。でも、その他の携帯端末は過去のキャリアが販売していた時の関係性から『SIMフリー』にしても使用することができない回線があることも事実です。

今回のKDDIの大規模な通信障害は長時間に渡り、規模も広範囲となったことから、完全復旧までに4日近くかかりました。様々なことが言われていますが、このような状況は他のキャリアでもこれまでに起きており、問題としては長時間、広範囲だったことにあります。

個人的な意見ではありますが、『携帯電話』という性質上、今回のKDDIの復旧は順序を間違えていなかったかと言いたいところがあります。『携帯電話』ですから『音声通話』ができて初めてその意味を持つのです。『データ通信』が回復したから復旧ではありません。『音声通話』がまともにできるようになってから初めて復旧と言えるのです。

システムの構成上の問題もあるとは思いますが『音声通話』を復旧させた上で『データ通信』の復旧をさせるべきであったと考えます。『音声通話』ができないことによって110番や119番通報ができないこと、新型コロナウイルス感染者と保健所が聞き取り調査や健康観察ができなかったことも大きな問題となっています。私の知る限り医療機関でも緊急時の連絡が取れないという状況もあったと聞いています。電話は音声で会話を繋ぐ『ライフライン』であることを通信事業者は忘れてはなりません。命に関わる問題に直結します。

今後、固定電話や公衆電話も現在の仕組みから携帯電話で主流となっている『VoLTE』と同じ仕組みのデータ通信網を活用した『VoIP』方式に切り替わります。

大規模な通信障害で影響を受けにくと考えられている固定電話や公衆電話も実はその回線網を変更することによってこれまでの安定を失うことは避けられません。

固定電話が家庭から姿を消し、公衆電話が街から姿を消した今、取ることができる『音声通信』の安全性確保はSIMフリーの携帯端末を持ち、複数のキャリアと契約し、1台の携帯端末で複数SIM(物理的なSIMとe-SIM)の併用や複数端末の使用で自己防衛をするほかはないように感じます。

日本の『ライフライン』の信頼性はこの夏の電力逼迫といい、今回の大規模な通信障害といいあちらこちらで起きている水道管の損傷事故など本当に失われているように感じてなりません。いつからこんな脆弱な国になってしまったのでしょうか。悲しい限りです。
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