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日本の電力危機。 [2022/04/19] [社会問題]

ついに大手電力、かつての一般電気事業者が法人契約の一部停止を打ち出しました。

法人契約の大手電力での契約件数は1割から2割と言われており、残りは家庭向けの契約
となっているのです。つまり、大手電力の契約はほとんどが家庭向けとなっているのです。
このため、1か所の電力使用量が大きい法人契約を止めて家庭向けの契約を守ろうという
ことから法人契約の一部停止という措置に至っているのです。

大手電力と呼ばれているのは、かつての一般電気事業者(東京電力や関西電力、中部電力
などの10社)のことで発電、送電、小売と発電から電気の販売までのすべてを地域ごとに
事実上、1社で独占している状態にありました。これは国策で電気事業が地域ごとに集約
され、北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄の10の電力会社
に再編された経緯から、ある意味では仕方のないことです。

そのため、電気料金は公益性が高く、使用者は公平な費用負担、供給者は適正な経営状況
とすることを目的として、電気料金には「総括原価方式」という、供給原価に基づき料金
が決められることになっています。ここで2020年に大手電力が担ってきた送電部門は中立
で公平である必要があるとして、財産的にも人員的にも完全分離する必要があることから
法的に「発送分離」として送電部門が切り離されました。このため、大手電力は沖縄電力
を除いて発電と小売(東京電力と中部電力は発電と小売も分社化)を行い、「新電力」と
大手電力も同じ立場となりました。

「発送分離」までは、発電、送電、小売の各部門を維持しなければならないということで
大手電力は非常に高い基本料金を設定していました。この基本料金の高さに目をつけて、
送電設備を持たない「新電力」は供給先まで送電するために大手電力が所有している送電
設備を借ります。これを「託送」と言います。その「託送」に必要な費用を支払いますが
この金額がおおよそ大手電力の基本料金の1/3から1/4に相当します。そこに「新電力」
は、自分ところの利益分を上乗せすると、基本料金は大手電力の半額以下で供給すること
が可能になるため「新電力」は安価で電力を供給することができるのです。

大手電力はその地域における標準的な電気料金を示す必要があるとして、2020年度までは
国(資源エネルギー庁)が標準的なメニューを公開することを義務付けていました。今も
価格維持を目的として公開はされています。一方で「新電力」は提案をするものの、法人
向け契約においては契約規模や市場価格などを考慮するため、電気料金の価格は供給する
法人やその施設によって違うため、家庭のように公開されている契約メニューというもの
が存在しません。

私もこの3月末まで長年、勤務先の関係施設で使用する電力の調達を行う実務の実質的な
責任者として関わっていましたから、その仕組みや業界の動向は誰よりも分かっています。
そのため電力会社からはかなり怖がられていたように思います(笑)。

今回の情報も早いうちから私の耳に入っていたので、どのような対策を立てようかと正直
なところ頭を悩ませていたのですが、この4月の人事異動で担当から外れたので、実質的
なことは後任の元部下に任せることになりますが、おそらく私が実質的に関わらなければ
対応できないような緊急事態になることは目に見えています。

ニュースなどで「新電力」が事業撤退をすることから、別の電力会社に切替を促し、最悪
契約先が見つからなくとも送電事業者が受け皿となることから電気が止まることはないと
事業撤退をする「新電力」は呑気なことを言っていますが、これは大きな間違いです。

電気の契約には様々な制約もあり、特に法人向けの特別高圧や高圧は簡単に契約先を変更
することができない仕組みとなっています。通常は供給先を決めてから最低でも2か月は
必要となります。だから、供給者の事業撤退など緊急事態に備えて送電事業者が供給先と
なる「電気供給最終保障約款」というものが定められているのです。

この送電事業者が受け皿となる「電気供給最終保障約款」に基づく契約にはいくつかの
注意事項があります。

 *原則として3か月分の電気料金を保証金として預ける必要があること
 *電気料金は地域の大手電力会社が公開している標準メニューの1.2倍となること
 *供給者のない(無契約)状態を防ぐ暫定的な契約のため1年未満の契約であること
 (一度契約の上で、本契約をしてもらえる電力会社を新たに探さなければならない。)

つまり、電気は止まる心配はないと言っても、使用者はとんでもない痛打を受けることに
なるのです。これは、電気料金が安価になるということで使用者が大手電力から新電力に
変更したことなのである意味では「自己責任」なので仕方のないことではあるのですが、
元の供給先であった新電力はあまりにも無責任なものです。

平成27年頃だったと記憶していますが、発電施設を持たない市場取引だけで「共同購入」
という名目で電気を供給していた大手の新電力が倒産しました。これが官公庁を取引先と
していたことから大変なことになりました。当時は電力事情も良かったことから、対応は
大変だったようですが、受け皿となる別の電力会社も多くあったことからことなきを得た
とは聞いています。
(私の勤務先はその新電力と契約していた施設がなかったので影響はありませんでした。)

このため、国(資源エネルギー庁)は、小売電気事業者の資格を届出制から登録制に変更
して、同様の事態が起きないようにしたのですが、再び起きてしまった状況にあります。

これを回避するには今のエネルギー事情を改善しなければ無理です。私は「賛成派」でも
「肯定派」でもありませんが、太陽光や風力といった再生可能エネルギーにシフトをする
政策には無理があります。最近では九州、東北、中国、四国の各電力管内で太陽光や風力
発電設備からの供給を止める出力制御が実施されました。これは発電設備の特性上、発電
出力を制御できないところに課題があるためです。水力、火力、原子力といったこれまで
の発電設備は水や蒸気の圧力で発電機を回す仕組みですから、その圧力を調整することで
発電出力を制御することが可能です。水力発電所のうち、上下に水源を置いて水位の落差
で発電する揚水発電所は昼間の電力使用量が多いときは水を上から下に流して発電をして
夜間の電力使用量が少ない時間帯には余剰となる電力消費を兼ねてポンプで水を上にある
水源地に戻しているのです。

また、太陽光は熱による建物の異常高温やパネルに反射する光による光害、設置場所での
災害対策に課題も多く、古くなったパネルの処理には発電をする半導体の材料として有毒
な元素であるヒ素が含まれていることから安全対策も必要となります。風力発電所も回転
により、周辺地域での低周波振動などの問題や強風による風車の落下、発電機の破損など
多くの課題があることも事実です。

このため、この状況を改善するには、やはり原子力発電所の稼働はやむを得ない選択では
ないかと考えます。東日本大震災による福島第一原子力発電所の重大事故があることから
安全対策を十分に施した上での稼働として現在様々な対策を行っている状況です。

一方で岸田総理は「理解をいただくしかない」などと本当にふざけた発言をして、国民の
生活をさらに脅かそうとしているとしか思えない発言には呆れます。正直なところ原子力
発電所の安全対策も停止期間を少しでも長引かせようとする時間稼ぎのための規制でしか
ないように感じてなりません。

現在、主力な火力発電所の燃料の多くは液化天然ガス(LNG)です。この液化天然ガスは
都市部を中心とした都市ガスの主成分でもあるのです。このため、現在日本では電力会社
と都市ガス会社の間で液化天然ガスの奪い合いが起きており、特に近畿地方では日本国内
の平均価格の2倍にも価格がなっているとも言われています。ここにロシアとウクライナ
情勢も入ってきているので液化天然ガスの状況は非常に厳しいものとなっており、日本の
エネルギー事情は非常に厳しい状況に置かれており、一般家庭では電気と都市ガスの高騰
により大きな打撃を受けています。

このため、本当に不足している部分を補うためには電力の出力制御が可能で規模の大きな
原子力発電所の稼働は安定したエネルギー供給と国民に負担を強いらないようにするには
最良の方法と考えられます。

今や家庭の電気料金と都市ガス料金の2から3割は発電や製造に必要な燃料(原料)調整
費用と電気料金の場合は再生可能エネルギーの固定買取価格の費用であることを忘れては
なりません。
果たして政府はエネルギーの安定供給に向けた政策をこれからどのように行うのかが本当
に問われることになるでしょう。

一層のこと、国民に「理解をいただくしかない」というのであれば、中央省庁が集中して
いる通称「霞が関村」一帯のエネルギー供給を止めてしまえば良いのです。あるいは国が
すべて「最終保障約款」に基づく契約として痛い目に合えば良いのですと言いたいところ
ですが、この費用はすべて「血税」なので安易には言えないところが腹の立つところです。

とにかく、今回の記事で日本のエネルギー事情は極めて悪く、このままだと大変なことに
なるため、特に電気については発電方法を再生可能エネルギーにシフトすることだけでは
問題や課題が多く、これまでのように原子力発電所を稼働させ必要最低限の需要バランス
を考えた電源構成に改めなければならないということに「エネルギーのプロ」としては、
気が付いていただければ幸いです。

原子力発電所の稼働についても私は「賛成派」でもなければ「肯定派」、「反対派」でも
なく、日本のエネルギー状況に応じて活用すれば良いと考えているだけです。
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